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【市民ライター企画インタビュー編】「天竜浜名湖鉄道」生熊正志さん

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市民ライター企画第2弾のインタビュー編では、浜松のリノベーションまちづくりが進んでいく中で、新たに生まれた『人の輪』に着目し、それぞれの場所でほしい暮らしを実現してリノベーションまちづくりに関わる人々にスポットを当ててインタビューしていきます。


こんにちは、鈴木俊太朗です。

前回の市民ライター企画で、私の中の天竜に対するイメージは変わりました。天竜には「人が出ていく現実がある一方で、面白いことを考えている人たちがいる、素敵な場所がある!」ということがわかった私は、そんな素敵な場所づくりをしている方にお話を伺いたくなりました。

今回は、ご縁があり天竜浜名湖鉄道株式会社の営業係長である生熊正志さんにインタビューをしました。

天浜線で長年様々な企画やPR活動をされてきた生熊さんに、天浜線の魅力や沿線地域への想いを聞きました。

ローカル線らしさ

ーー生熊さんの考える、天浜線の魅力はズバリなんでしょうか?

生熊さん:
「まさに『ローカル線らしさ』という言葉一つで表して良いと思います。」

ーー『らしさ』ですか。

生熊さん:
「風光明媚な車窓の景色をお楽しみいただけるところとか、降り立った駅の地元の方の温かみを感じるところとかが、魅力の一つかなと思います。天浜線の両端である掛川駅と新所原駅はJR東海道線の駅もあって、掛川でいうと新幹線もあって、お急ぎの方はそういった選択もできながら、わざわざ来ていただく方はやっぱり「ゆったりとした時間を過ごしたい」といった感じで来ていただけているかなと考えると、その期待に応えられる『ゆったり感』が天浜線の魅力かなと思っております。」

ーー天浜線は東西に広い路線だと思いますが、それも魅力になりそうですね。

生熊さん:
「そうですね。東の掛川はお茶の産地で山間を走り、西の新所原まで行くと海に近くなります。山から海までそれぞれの直産のものもありますし、車窓の移り変わりも楽しんでいただけます。人の感じ、人柄も少し違うと思います。」

ーー景色や特産品だけでなく、地域ごとに人柄の違いまで感じられるんですね。

生熊さん:
「例えば、掛川は昔から二宮尊徳の『報徳の精神』があるところと言われているのですが、都会にはあまりいない「世話好きな方」がいるようなイメージがあります。そのような、人柄のちょっとした違いも一つの線で体験できちゃう、降り立ったところで感じるものが違う、地域が違う感じがする、というのは天浜線で楽しんでいただけるところかなと思います。」

ーー日常や人混みを離れて、そういった地域の温かみを感じたい人は増えていそうですね。

生熊さん:
「そうですね。コロナ禍になっても改めて、『自然回帰』や『貴重な体験』を求めているお客様がいらっしゃるなというのを感じています。そういった『非日常』を提供する中で、最近はかもめの珈琲屋さんの山本さんという方が移動販売で私共の駅舎を活用くださったりとか、ちょっとずつですけど、地元で活動してくださっている方と連携を取れていることがありがたいなと思っています。例えば、お客様が天竜二俣駅に車両基地の見学ツアーでいらっしゃった際に、その開催時間まで少し余裕があるときに喫茶店が欲しいと元々言われていました。そんな中で、ちょうど私共の希望とマッチした珈琲屋さんに露店の形で来ていただけて、お客様の求めていた時間や喫茶・珈琲を提供いただけるようになったのは、非常にありがたいなと思っています。山本さんが来ると本当に人が群がって、楽しく話をしてくださっているところを見ると、「ああ良かったな来てくれて、ありがたいな」と思うと同時に、それが地域の温かみや人の温かみという『ローカル線らしさ』となっていて、良いなと思っています。」

なんでもトライしてみよう

ーー最近では『エヴァンゲリオン』『ゆるキャン△』『マリメッコ』などとコラボしたラッピング列車が話題になっているかと思います。コラボのきっかけはあったのですか?

生熊さん:
「一番最初のきっかけとしては、沿線にある都田建設さんが『マリメッコ』を活用して駅舎をリノベーションしてくださって、そのときに車両にも装飾をしたものを走らせたいというのをご提案いただいたものがきっかけでございます。『エヴァンゲリオン』や『ゆるキャン△』はどちらかというと棚ぼたで、こちらからロケーションの誘致をしたわけではなく、原作者に興味を持っていただいてモデル地として使っていただいたという形で、ありがたいお話だなと思っています。せっかくモデル地として使っていただいたものですから、地域活性の側面でも有効活用させていただけたらなというところで、両者ともラッピング列車を走らせています。ただの経済活動ではなく、例えばそれぞれの列車の時刻をご案内したりなどして、ファンの方が来て楽しんでいただけるものとして作っています。」

ーー先程伺った『ローカル線らしさ』みたいなものが、自然と『聖地』としてのイメージにつながったのかなと思いますね。これまで天浜線を訪れたことがなかった方が来るようになったのではないでしょうか?

生熊さん:
「そうですね、いろいろな層のお客様に響くものが増えてきたのはありがたいなと思っています。ちょうど昨日も三ヶ日方面まで出かけていたのですが、そのときすれ違ったマリメッコ列車の中は女性ばかりでした。『エヴァ』や『ゆるキャン△』列車は、アニメファンの方に来ていただいていると思います。普段味わえない体験をしたい方は、〈山ノ舎〉の中谷さんがやってくださった駅舎ホテル〈INN MY LIFE〉 を体験してもらえています。そういったなかなか他では体験できないことを、今後も増やしていけたらいいなと思っています。それはやはり、なかなか天浜線単独では難しくて、地元で地域の個性を活かしてやっていこうと考えている方たちと一緒にやれるのが理想かなと思っていますね。」

ーー中谷さんのような新しい方が沿線地域に来て、いろんなことを提案してくださることで、天浜線としても新しいことがやりやすくなって来ている部分はありますか?

生熊さん:
「そうですね。僭越ですが「天浜線に相談してみよう」と思っていただけるような雰囲気になっていると感じますし、そのような立場になれればいいなと思っています。みなさんが「なんでもトライしてみよう」と考え、私共としても、地域の連携に対して話が聞ける態勢がとれるようになったかなと思っています。」

より個性あふれる沿線地域に

ーーこれまでも地域の方々と連携した企画が様々あったと思いますが、これからやりたいことはありますか?

生熊さん:
「沿線域内の連携を図る事業として、域内の全てのエリアから出店を募った『天浜線マルシェ』の開催や、天浜線の『盛り上げ大使』をやっていただく活動を企画しています。何か魅力をお伝えするとき、ひとつの地域やサービスだけだと意外とインパクトに欠けてしまうところがあるのですが、掛川から湖西まで広域で力を合わせたときのパワーはすごいものがあると思います。沿線域内という大きな規模でやれるっていうのはありがたいと思っていますね。」

ーー天浜線だからこそできる企画ですね!

生熊さん:
「今回の『天浜線マルシェ』は、鉄道会社がやることで沿線域内の出店者を募れますし、鉄道を通じたPRもできるので広域にお客様を呼び込めますし、お客様も一回でいろんな地域のサービスが楽しめるので、出店者にとってもお客様にとっても良い企画になると期待しています。」

ーー西から東までいろんな方が集まることで、域内の新しいつながりも生まれそうですね。

生熊さん:
「次の二俣でのマルシェは〈山ノ舎〉の中谷さんにもお願いする予定ですが、ありがたいのが、みなさんそれぞれのお仲間を誘ってくれるようになってきて、域内の全部のエリアから出店してくれる方がいらっしゃることです。出店者様同士も新しいつながりができてくれたら嬉しいなと思っていますし、お客様にも新しくその地域の魅力を知っていただくきっかけになると嬉しいなと思っています。」

ーー地域の方々といろいろな企画をやっていらっしゃる生熊さんですが、生熊さんご自身として、沿線地域をこうしていきたい、どうなって欲しいというお考えはありますか?

生熊さん:
「土日がほぼ仕事なので参加できないのですが、本当はこういった(浜松リノベーションまちづくりの)活動に参加したいんですよ!私も心配になってしまうのは、その地域の個性やにぎわいが無くなってしまうほど人が少なくなってしまうことです。そこをみなさんの活動の中で、地域が違う形でまた元気を取り戻してもらえたら嬉しいなとすごく思っていますね。新しい方たちに風を吹き込んでもらえて、何かそこで天浜線が一役買えたら、ありがたいと思っています。」

ーー天浜線沿線地域それぞれに個性があるからこそ、その違いを楽しめるのですもんね。

生熊さん:
「天浜線がそこまで首を突っ込んでやれていないのが現状なのですが、その地域で活動を頑張ってやってくださっている方がその地域の『色』を出してくださると、私共もPRしやすいし「この地域ではこういった体験ができます」といった話もしやすくなります。新しい『その地域らしさ』がご紹介できるようになったら面白いですね。そのためにも、浜松リノベーションまちづくりの「天浜線でなにかやってみたい」と思う方々とお話する機会を設けていけたらいいなと思います。」

ーー声を掛け合って、一緒に盛り上げていけたらいいですね。

遠くから聞こえる列車の警笛の音を聞きながら、物腰柔らかな話し方から伝わってくる生熊さんの天浜線への愛や、沿線地域への愛を感じることができたインタビューでした。

天浜線沿線にはそれぞれの地域に『色』があり、それがグラデーションになっているかのように楽しめるのが、他では体験できない天浜線の魅力なのだと感じました。

私も週末にゆっくりと時間を取って、それぞれの地域にどっぷりと染まるように、楽しみながら応援していきたいと思います。

市民ライター 鈴木 俊太朗

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