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特集インタビュー
【History】


※この記事は、2019年2月に作成しました。
現在は、拠点を持たずに、本をテーマにしたワークショップやイベントを開催しています。 なお、この場所は、遠州産地の織物や染物の魅力を発信するコミュニティスペース 「entrance」として活用されています。

本をきっかけに『縁』が生まれる
小さな図書館&コミュニティスペース

浜松市中区大工町。大通りの向こうにザザシティ浜松が見える交通量の多い場所に、昨年10月オープンしたのが『町塾〇-えん-』だ。みんなが持ち寄った本を自由に借りられるライブラリー機能と、トークやものづくりを楽しむ町塾機能を兼ね備えた、まちのコミュニティスペースとなっている。オープン後、月1~2回ペースでイベントを開催。参加者は持参した本を紹介しながら自己紹介するのがお決まりとなっている。この場所を立ち上げたのは瀧澤あさみさんと鈴木真知子さん。2人とも、普段は会社員をしている。


通りの向こうにはザザシティが

『町塾〇-えん-』の外観

本をテーマに開催されたワークショップの様子

偶然の出来事から
別チームの物件を引き継ぐことに

瀧澤さんは2016年に開催された『第3回リノベーションスクール@浜松』の卒業生。当時、建築やリノベーションに携わる部署で勤務していたこともあり、新たな刺激と学びを求めて参加。自分のユニット(チーム)が担当していた物件は事業化には至らなかったが、ひょんなことから別ユニットの担当物件を自分が引き継いで進めることに。

瀧澤
「スクールのとき、間違えて登録されてしまった別ユニットのグループメールから、そのユニットの進捗情報が流れてきていて。中心となって事業化しようとしている方が転勤になり、もうやらないという結論になったのを見て『それなら私がここを引き継ぎたい』という想いが沸き起こってきたんです」

『町塾〇-えん-』の運営する瀧澤あさみさん

瀧澤さんが参加したリノベーションスクールの様子

そのときの物件は現在の場所ではなく肴町の物件。レンタル制のスイーツショップやシェアキッチンなど、いろいろなアイデアを考えたが、具体的なプレイヤーが見つからず難航。同じ目線で相談できる仲間がほしいと思っていた頃、リノベーションスクールを担当する浜松市職員・佐々木豊さんに紹介されたのが鈴木さんだった。

鈴木

鈴木真知子さん
「私は前職でまちづくりに関わる仕事をしていて、そのときに知り合ったのが佐々木さんでした。あさみさんと知り合ったときはまだリノベーションスクールには参加していなかったんですが、まちづくりに興味があったので紹介してもらいました」

仲間と一緒に根気強く探った
「自分たちの想い」

初対面の2人だったが、話のテンポや進めていくスピード、何より目指す方向性が似ていると感じ、自然と何でも言い合える関係に。「自分たちは何を実現したいんだろう?」
何度も話し合いを重ねるうちに、2人の頭に浮かんだのが《リビング》というキーワードだった。‟まるで家族のように、多世代の人が集まって交流できるコミュニティづくりができたら…”

全国に広がる『まちライブラリー』の仕組みを知ったのもその頃。『まちライブラリー』とは、みんなでお気に入りの本を持ち寄り、その本に推薦コメントを添えて誰でも借りられるようにする取り組みだ。誰でも始められるうえ、本はいろんな世代の人が楽しめるアイテム。本を介して人と人が繋がる場になればと考えた。


忙しい仕事の合間に意見出しを重ねる

持込者の推薦文がまちライブラリーの特徴

収益維持を心配するオーナーの考えもあり、肴町の物件では実現できなかったが、『第5回リノベーションスクール@浜松(2017年)』に参加した鈴木さんの担当物件でやらせてもらえることになり、とんとん拍子にオープンが決まる。元お布団屋さんだった建物の歴史が伝わる懐かしい雰囲気は残しつつ、本棚作りや掃除など、お金をかけずに自分たちで準備を進めた。


店舗に残されていたお布団はそのままに

本を並べる棚はDIYで

稼ぐことがすべてじゃない。
会社員の私たちでも、できることがある。

瀧澤
「本を紹介し合うのもそうですが、一方的ではなく一緒に学び合える場になればと思い、『みんなが先生、みんなが生徒、まちかどの小さな図書館』というコピーを考えました。リノベーションスクールに参加して、私は1人では何もできないと気づきました。気づいたから、逆に楽になった(笑)。1人じゃ何もできないなら、いろんな人の力を借りてやっていく形があってもいい。特別な人じゃなくても、誰だって、誰かにちょっと教えてあげられることが何かあると思うんです」
鈴木
「会社を作ってお金を稼ぐ!というリノベーションスクールの考えに反するかもしれないけど(笑)、私たちにとって稼ぐことは最優先じゃないんです。私たちは会社員で《副業禁止》という縛りがあるけれど、そんな私たちでもまちに対してできることがあると思う。まちづくりは市の人や建築家など特別な人だけがやることじゃなくて、私たちのような普通の会社員でも関われるっていうことをこの場所から発信していけたらと思っています」

ちょっと何かやりたい人の受け皿に。
人との縁を活かして活動を広げたい。

この場所をもっと多くの人に知ってもらいたいとの想いから、今年からこの場所を使ってお店を開いてくれる人を探し始めたという2人。会社員のため昼間開けられる日が限られる2人の代わりにシャッターを開け、図書館スペースの一角を販売場所として使ってもらえたらと話す。本を読みながら食べられるスイーツやコーヒーの販売のほか、雑貨販売やワークショップにも使える空間だ。自分たちのように『ちょっと何かやりたい』人の受け皿になれたらと語る。

瀧澤
「ここに入ってから近所の方々のところに挨拶に行ってみると、このエリアには頑張っているお店や素敵な人がたくさんいて、同じようにこの通りをもっとよくしたいと思っている人が何人もいることに気づきました。そんな方々の力を借りつつ、地域で何かできたら嬉しいですね」

『町塾〇-えん-』を通して生まれた人と人の縁が、今後どのように発展していくか、明るくてポジティブな2人のチャレンジは、まだ始まったばかりだ。


いつの間にか近所の人と顔なじみに

持ち込まれた本も少しずつ増えてきている

町塾〇-えん-が誕生した3つのポイント

町塾〇-えん-が誕生したポイント①

諦めないこと

いくつものプランを提案したが最初はなかなか形にならなかったと話す瀧澤さん。一度ダメでもあきらめず、とりあえず何か形になるまでやってみることが大切と話す。

町塾〇-えん-が誕生したポイント②

自分たちにできるやり方で

普段は会社員としてフルタイムで働く2人。自由に使える時間に限りがあるからこそ、逆に、そんな自分たちでもできる方法や仕組みを考えたと話す。まずは小さくても一歩踏み出すことが大事。

町塾〇-えん-が誕生したポイント③

無理しないこと

自分たちが楽しみながら、ワクワクする気持ちがないと行動は起こせないと鈴木さん。無理はせず、でも、ちょっとだけ頑張ってやってみる、そのくらいの力加減で仕事や家庭とのバランスを取っているそう。



瀧澤あさみ(写真左)

愛知県出身。就職、結婚を機に浜松に移り住む。住宅の建築に携わった後、現在は不動産部でリノベーションなどの事業を行なっている。

鈴木真知子(写真右)

浜松市出身。まちづくり関係の仕事に5年携わった後、現在は介護福祉会社に勤めながら町塾えんの活動に取り組む。

【町塾〇-えん-】

問い合わせ先 machijukuen@gmail.com
ウェブサイト https://machijuku-en.jimdofree.com/
Facebookページ https://www.facebook.com/machijuku.en/